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花に想う~春の川辺に佳肴あり(後篇)
     
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ツンと辛いカラシ菜漬を懲りずに口いっぱいに頬張って

ぐはぐはいいながら酒を飲んだり飯を喰ったり

幾日かかけて楽しむうち緑鮮やかだったカラシ菜漬は

やがて黄色から黄褐色に変色してくるだろう

ツボミに蜜やら花粉やら栄養分が含まれるせいか

漬物のくせにカラシ菜漬は傷むのがけっこう速い

付着していた乳酸菌に発酵を促されて

酸味の生じた漬物もそれはそれで旨いものだが

この風味にはちょっと好き嫌いがあるだろう

悪い菌が繁殖して腐敗臭を感じることもある

ああもう終わりか天然の喰い物の旬は短いものだなと

三角コーナーに捨ててお仕舞いになるか



いやいやちょっとお待ちなさい


せっかくいただいた自然の命だもの

もう一工夫して美味しく喰ってみよう









...









若い頃俺はサラリーマンだったことがあって

しばらく九州に暮らしたと以前お話したと思う

毎晩のように中州に繰り出しては酒を飲み

ご多分に漏れず〆にはラーメンをよく喰った

九州でラーメンといえばやっぱりとんこつラーメンで

そのケモノ臭さとしこたまぶち込まれた化学調味料に

俺の舌とココロはシビレさせられたものだ


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今でも無性に喰いたくなる

薬味は紅ショウガがメジャーだったが

店によってはよく高菜の油炒めが置かれていた

高菜の古漬を唐辛子を効かせて炒めたもので

関東育ちの俺は知らない喰い物だったが

ピリリと辛いそれを俺は愛好した

高菜は関東ではなじみの薄い菜っ葉だが

味や性質はカラシ菜の兄弟みたいなものだろう

今日は高菜の代わりに古くなったカラシ菜漬を

九州の流儀で炒めてみたいと思うのだ









...








カラシ菜を小口に切って唐辛子はたっぷり


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辛い方が旨いがお好みで

油で炒めるのだが油の種類は何でもいい

菜の花つながりでキャノーラ油はどうだ


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無難な選択

意外なところではラードがけっこう合う

獣の脂のコク味が油気のないカラシ菜漬に力を与えるのだ

ラードがいいからといってもワザワザ買いに逝く必要はない

豚の三枚肉を鍋にしたり角煮を作ったり

翌朝にはスープや煮汁に脂が凝固して浮いているだろう

それを菜箸でつまみ取ってフライパンに落とし込めばいい


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安上がりだ

このラード炒めは旨いのだが冷めると脂が固まってしまう

喰うたびに炒め直さなくてはならないのが

ちょっとメンドクサイといえばメンドクサイ

だから俺は多く胡麻油を使う


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これもコクがある

お好みでいろいろ試してみるのがよろしいが

まあ揚げ物をやった残り油でも何でもいいのだ









...









多めの味醂を加えて炒めつけるのだが

もともと漬物としての塩分が含まれているから

醤油はいいように加減すればいい

仕上げに煎り胡麻をパラリと振って


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アッという間に出来上がり








...









我が田に水を引くようだが

このカラシ菜漬の油炒めはかなり旨い

俺は本家の高菜炒めより旨いんじゃないかと思う


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自信作です

甘味を勝たせれば飯がいくらでも喰えるし

唐辛子を効かせれば酒がいくらでも飲める

日本酒もイイが焼酎によく合うと思う

味付けを濃くすれば日持ちもするだろうが

なに旨いからスグ食い尽くしてしまうだろう

野遊びの楽しさについ採り過ぎてしまったとしても

無駄にするシンパイはないと俺が請け合う









...









カラシ菜漬の油炒めの在庫がなくなったので

俺はみたび川辺に出かけた

カラシ菜はいよいよ成長して咲き誇り

川べりは一面の菜の花畑になっていた


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真っ黄色ですよ

よく探せばまだ喰える株があるかもしれないが

もういいや

昨日より少し暖かい風に吹かれながら

陶然として俺は菜の花に囲まれていた

アブラ菜と比べて色と匂いが少し薄い気もするが

カラシ菜の花もやっぱり菜の花で

押し寄せるその匂いは俺の記憶の畑に鍬を入れる

ふうわりとした長いフレアスカートを履いた背の高い

ちょっとアカ抜けない娘が花の中に佇んでいる

近づいて寄り添う俺は彼女の洗い髪の匂いを

今嗅いでいるかのように感じることができるのだ




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by US100243 | 2015-04-17 10:11 | 里の味 | Comments(15)
花に想う~春の川辺に佳肴あり(中篇)
   
<<続き

   
皆さんお住まいの街もたぶんそうだと思うのだが

俺の棲家の近所にはドブ川があって

毎春その川辺には菜の花が盛大に花を咲かせる

用水や排水の流れ着く先で

街で一番海抜の低い辺りを流れるから

栄養分も豊富で湿り気も適当なんだろう

今年はどうかと来てみたが少し早かったようだ

それに生えてる菜の花様子がちょっと変だぞ


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なんだかゴツイな

野生とは言えいかにも頑丈で強そうだ

この菜の花は菜の花でもカラシ菜の菜の花で

実は自生して咲く菜の花はほとんどカラシ菜なのだ

昔は菜の花といえばたいていはアブラ菜の菜の花で

その種子である菜種から搾り取る菜種油は

重要な農産品だったから菜の花畑も多かった

コボレ種も多かったろうからあちこちで咲く菜の花は

たいていはアブラナだったのだ

菜種油はキャノーラ油なんてスカした名前になって

よく売られているし大豆油アレルギーの俺も愛用しているが

そのほとんどは輸入物でもう菜種を蒔く農家もない

蒔かれるのは観光地で観賞用としてくらいだ


これも時代の流れだろう


性質の強いカラシ菜が野生種として生き残り

ドブ川べりを制覇して今に至っている









...









このカラシ菜、丈夫でどこにでも自生しているとなると

何だかアリガタミも薄くなってしまうがバカにしてはいけない

季節の喰い物としてかなり旨いものなのだ

俺が見たところ結構な都会でも生えているから

手軽に野草摘みが楽しめるのも嬉しい

たいてい無尽蔵に群生してるから興味を持った皆さんが

春の川辺に出かけて少しくらい採ったところで

資源の枯渇を心配することもないし

どこぞの漁港のように軋轢やら衝突やらの恐れもないだろう

喰いたいだけ採ってこの春の雅味を味わってはいかがかと

遠慮なくご紹介したいと思うのだ









...









栄養分も水分も豊富なドブ川べりに生えるカラシ菜は

メキメキ育ってその塔はアスパラガスくらいに太い

何だか硬くて食えないんじゃないかと

シンパイする向きもおありかと思うがシンパイない

他の山菜野草と同様に手でポキリと折れれば

そこから美味しく喰えるのだと前にもお話したと思う


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細くても折れないのはダメ

遠目に霞んで見えるのは

梅かな桃かな桜かなと野遊びがてらに採ったとしても

5分もあれば喰うには充分なだけ採れるだろう


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今日はこれだけ

家に帰って料ってみるか








...








サッと湯通しして水をかけ粗熱を取る


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茹でちゃダメ

塩をして容器に入れ冷蔵庫にしまう

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色鮮やかだ

重しを乗せてもいいが乗せなくてもできる

漬けてる途中でよく揉むと辛みの強い旨い漬物になるから

時間と情熱のあるお方は手塩にかけて揉んでやるとよい

俺はといえばタッパーウェアーに入れて密封し

上下左右にガシャガシャガシャとシェイクして

ああよく揉めたと澄まし顔だ

一日おけば旨いカラシ菜漬が出来上がる


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小口に切って喰おう








...









料理とは言えないような簡単な一品だが

これが結構イイ肴になる


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血圧注意

種子から和カラシを作ったり野菜として喰ったり

もともとは栽培種であったカラシ菜ではあるが

野生化して久しいせいかホロ苦いアクも含まれる

だがそのホロ苦さや青臭さが萌えいずる新芽の

内包するエネルギーをいただくようにも感じられて

春の酒にふさわしい肴だと俺は思っている









...









カラシ菜漬の辛さは鼻にツンとくる辛さで

同じアブラナ科のワサビと同系統の辛さだ

だから米の飯にもとてもよく合う

俺はカラシ菜漬を混ぜ込んだ飯で飲むこともある


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糖尿注意

酒を嗜まないお方も丼飯にカラシ菜漬をどさりと載せて

ちょっと醤油を垂らして口いっぱいに頬張ってみたまえ



ぐはっ


っとくるだろう

揮発性らしいその辛み成分が鼻腔を抜けて

頭蓋の裏に激突して脳内に拡散する

そんな危険も孕むからカラシ菜漬がいくら旨くても

ゆっくり落ち着いて味わっていただきたい









...







採ったカラシ菜はすぐに喰い尽くしてしまったから

俺は再び川辺に向かった


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遅かったか

カラシ菜は成長して菜の花畑になっていた

だが諦めるのはまだ早い

斜面の日陰側や川の水面に近いところには

気温が低いのかまだ蕾が開かない株も多い

個体差もあって咲き誇る株の隣にだって

喰い頃の株があったりもする

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けっこう採れました

そんなふうに同じ地域でも未練がましく探索すれば

半月くらいはカラシ菜摘みを楽しむことができるだろう



続く>>



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もう少し書かせてね
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by US100243 | 2015-04-13 18:10 | 里の味 | Comments(10)
花に想う~春の川辺に佳肴あり(前篇)
   
   
菜の花畠に入日薄れ

見わたす山の端 霞ふかし


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唱歌が好きです


春はやっぱり菜の花だろう

スミレだってチューリップだってもちろんイイし

王道は桜に決まってるじゃないかと叱られたなら

それはそれで正論でお返しする言葉もない

だが菜の花には独特の香りがあるだろう

俺の呆けたアタマの中に存在する思い出の多くは

それらにまつわる匂いの記憶と分かち難く

郷愁やら後悔やら興奮やら

こもごもの感情を喚起させると以前お話したと思うが

この菜の花の香りに俺は特別の思い入れがある

俺にとって数ある春の花の中で最も身近で好もしくて

そしてココロ揺さぶられる花は菜の花なのだ









...











ずっと昔もう30有余年が過ぎたろう

まだ学生で新学期の始まる前の春休み

俺は顔をだしていたサークルの仲間たちと

外房は御宿海岸に一泊の小旅行に出かけた


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その頃から建ってたとおもう

その時代、海や山には安価な民宿がまだ残っていて

貧乏学生の旅行や合宿には重宝したものだ

泊まった民宿もたぶん漁師と兼業だったのだろう

ピカピカの金目鯛の刺身を喰いきれないほど出してくれた

酒の持ち込みもOKで俺たちの気勢はいよいよ上がった

若者は基本的にバカだから飲み過ぎて吐くヤツが何人もいた

もちろん俺も仲間に交じってハシャイではいたが

そのじつ内心ではあまり楽しまなかった

人付き合いより花鳥風月を俺は愛した

魚釣りを通じて幸田露伴や井伏鱒二を好んで読んだり

山本夏彦というヒネクレモノの爺さんにに私淑していたり

同世代の連中とはあまり話が合わなかった

その夜の俺も仲間の間を杯を持ってまわりながら

小さく開けた窓から聞こえてくる波の音や

潮の香りにばかり本当はココロを向けていたのだ









...









帰りの道中だったろう

俺はさりげなくある娘の隣の席に座った

その下級生の娘に俺は恋をしていた

首尾よく隣に座ったものの俺は女性にオクテだったから

何を話せば年頃の娘が喜ぶのか皆目わからない

俺はおずおずと彼女に語りかけた

昨日海岸を散歩してるとき変な魚が落ちてたよね

ああはい、ちょっとグロテスクでした

あれはゴンズイといって危ないから触っちゃだめだよ

はい、たぶん触らないと思います

でも食べると結構美味しいんだよ

はぁ...


何とも盛り上がらない気まずい空気とともに

俺たちは千葉の山あいの里を抜ける列車に揺られていた

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千葉の田舎は変わらんね








...








車窓は既に夕闇に閉ざされ

もう外の景色は分からない

若者達の熱気に誰かが窓を開けたのだろう

どこからか流れ込む春の夜気に

確かに花の香りを感じた

イイ匂いだね

俺は答えを期待せずに彼女に言った

はい、菜の花ですね

興味に眼をキラリと光らせ彼女が答える

えっ、わかるの

訊けば彼女は動植物に興味があって

ことのほか香りのいい花が好きなのだという

そしてこの偏屈そうな先輩学生(俺のこと)が

自分と同じ嗜好を持っていることに驚いたようだ

花の匂いは言葉で説明するのが難しいがゆえに

知っている者同士のココロを近づける

周りの学生たちがえーっ聖子ちゃんがぁーだとか

やっぱりパンタロンがナウいよねだとか

ワイワイしゃべり合う喧騒の中で俺たちふたりのココロは

夜の闇の中に広がっているであろう菜の花畑を

肩を寄せ合い歩き始めていた


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美化しまくり








...









僕は花が咲いてるとつい匂いを嗅いでしまうから

俺は彼女にゆっくりと語りかける

散歩から帰ると鼻のアタマによく花粉が付いてるんだ

えーっ咲いたマンさんて可愛い

嬉しそうに笑う彼女はいきなり俺に質問をする

アジサイって何科か知ってます?

うーん何だろう、ウツギの仲間かな

ぶーっ、ユキノシタ科なんですよぉ

へーっ!意外だなぁ



...




他愛もないとおっしゃるか

その通り他愛も何もない若いふたりの会話だが

彼女と一緒に菜の花の香りを嗅いで

俺は充分シアワセだった

昨夜宿で洗ったらしい彼女の髪の匂いを

分からぬように胸いっぱいに呼吸して

ああ今この俺にこの瞬間以上のものは

何も要らないとココロの底から思っていた


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サカッてもええのん









...









季節の変わり目の寒暖の差で精神が失調をきたしたのか

われにもあらず変な話をしてしまったようだ

こんな古臭い昭和のプラトニックラヴのお話は

ミもココロも汚れちまった皆さんには

たぶんお分かりいただけないだろう

俺もほとんど忘れかけていた

言って詮無いお話はこれくらいにして

春風そよぐ野辺に出て菜の花を探してみよう

そしてその香りを胸いっぱいに吸い込めば

あの頃の感性やら情熱やら性欲やらが

少しは甦ってくるかもしれない

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花の下にて春死なむ


続く>>



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by US100243 | 2015-04-08 14:33 | 里の味 | Comments(12)
  

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