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つゆのあとさき
   
   
今がまさしくその時だろう


本場鳥取産は高いから鹿児島産だっていい

なに、ドコの産だって半額処分セールだっていいから

すぐに八百屋に走って泥ラッキョウを手に入れ



ぜひラッキョウをお漬けなさい

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お安い鹿児島産は即売り切れ








...









梅雨入りを迎え渓流も本格的にシーズン入りし

海べりにもカタクチイワシが接岸してると聞く

何を悠長にラッキョウの話なんぞをしてるのかと

笑われてしまうだろうがこれにはちょっとワケがある

ワケがあると言っても大したワケじゃなく

早い話が渓で転んで足に怪我したのだ

骨は折れていないから仕事に差し支えはないが

ひと月経つ今もまだ痛いから釣りには逝けない

足ごしらえはちゃんとしてたし

別に急峻な山岳渓流でもない

勝手も知った通い慣れた沢で転んじまった



ヤキが回ったってことだろう


年はとりたくないもんだ








...









GW明けに俺は渓で遊んだ


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水温は12℃

爽やかに晴れたとてもいい日和で

甘い風の匂いをたどると


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藤の花が咲いていた

毛鉤に飛びつくヤマメにも肉が付いてきて

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もっと太れ

これから梅雨明けまでの短い間が

俺にとって渓流釣りのピークなのだ


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梅雨が明けると味は落ち出す








...









風がでてきた

ひと休みしてかたわらを見るとオオイタドリが生えている


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スカンポと呼ぶ地方もある

オオイタドリは山では普通に見る植物で

秋に巣食うイタドリ虫はイワナの好餌と言われていた

最近はとんと聞かないがまだ使われてるのかな

そういえば山ブドウのツルに巣くったブドウ虫も

俺がガキの頃には一本100円くらいで売られていて

そのツルの膨らんだ部分を束ねたものをよく買った

一本つまり一匹のブドウ虫が100円だから

今考えても結構高いエサで

せっかく買ったそのツルの膨らみが空き家だったりすると

ずいぶんとクヤシク思った記憶がある

そしてたまに一本のツルに二匹入っていたりすると

それだけでヤマメやマスを釣ったくらいに嬉しかったもんだ

ブドウ虫採りはいい小遣い稼ぎになったと聞くが

養殖のブドウ虫が売られている今は

もうそんなこともないのだろう









...









オオイタドリを折り採る


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ポンと音がする

ガシガシと齧る

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すっぱーい

渇きかけた喉に唾液を誘う酸味が心地よい

そうこうしてるうちに風はいよいよ強くなる

何の釣りもたいていそうだが特に毛鉤釣りは風に弱い

俺はひとまず竿をたたんだのだ









...









山道に上がるとスイバが生えていた


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これもスカンポと呼ばれる

西洋の読み物でもちょくちょく見かけるくらいだから

世界的にポピュラーな野草だと思うが

なぜだか俺の育った地域ではほどんど生えてなかった

だから俺にとっては結構アコガレの植物で

見つけるとたいていこうして折り採り


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こいつは音はしない

ガシガシガシと噛みつぶし

喉とココロを潤すならわしだ


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すっぱーい

そんなふうにフラフラと遊んでいたが

風は一向に収まらなかった

むしろどんどん強く吹いてきて

こうなるとハエ竿テンカラじゃお手上げだろう

仕掛けを詰めて重いタマを噛ませて

マブナのヅキ釣りのように魚を獲る手はあるが

今更川虫を採るのもメンドクサイ

俺は風を頭上に山襞深く流れる

小さな沢のひとつに入ることにした









...









林道脇の駐車スペースに車を残し

俺は杉山の中にもぐりこみ沢を目指す

杉山は間伐したばかりのようで

杉の枝やら丸太やらがごろごろ転がっている

もうずいぶんと太く育った杉なので

割り箸やら何やらに利用すればと思うが

運び出す手間賃にもならないのであろう

歩きにくいが暗い山にはいいモノもあった


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シドケだ

標準和名はモミジガサで旨い山菜だ

俺はこのシドケの独特な香りが大そう好きで

茹ですぎないよう注意して薄味のオヒタシにする

シャキシャキとした歯ごたえと香りを楽しむのだ

そういえば釣友Mはマヨネーズが合うと言っていたな

いい年をしてジャンクな奴めと思うが

山菜にマヨネーズは確かに合う

サッパリしたものに油脂を当てるのは料理の定石だろう

俺はタップリ喰うだけのシドケを摘み採ったのだ








...









杉山を抜け広葉樹林をしばらく進むと

微かな水音が聴こえてきて沢筋に出る

この辺りは巨岩巨石のあいだを

わずかな水がチョロチョロと流れているだけだ

こんな流れの中にも渓流魚は居る

増水した時に半信半疑で竿を入れると

いったいどこに隠れていたんだと思うような

良型のイワナやヤマメが釣れたりする

でも平水時ではちょっと難しいだろう








...









しばらく登ると堰堤が見えてきた

それを越えると流れが現れる


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水温は11℃

流れに毛鉤を浮かべると魚がでてくる

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コンニチハ

小さいけれど綺麗なヤマメだ

沢筋だからイワナも多い


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骨酒になってね

俺は骨酒用にイワナをひとつだけキープし

腰に下げた友バッグに水とともに入れた









...









沢は種沢とも言って魚の補給地だと思うから

釣って喰う俺はなるべく本流筋で釣るようにしている

でも本当は山の胎内にもぐり込んでいくような

こんな小さな沢での釣りが大好きなのだ

大自然に抱かれているようなココロ持ちさえして

魚や草木との距離もより近く感じる

そんな安心感から油断したのか魔が差したのか

体重を預けていた左足が滑った

踏ん張ってバランスを取ろうとした右足も滑った

体をひねって岩に突こうとした右手も滑り

俺はそのまま沢水の中に倒れ込んだのだ









...









膝くらいの深さのなんでもない流れだったが

11℃の沢水は冷たく俺は声にならない悲鳴を上げた

慌てて起き上がろうともがくと左足の腿に激痛が走る

倒れ込む過程でしたたか岩に打ちつけたようだ

両手で岩を掴んで身体を引きずり上げる



ああ、なんてこった


骨は折れてないようだが左足が痛くて動かせない

情けない話だがその時俺は死を想った

落ち着いて考えれば左足一本くらい利かなくたって

残りの三肢で時間はかかるが移動は出来る

よほどの山奥でなければ何とかなるだろう

だが冷たい水は体温と共に精神力をも奪ったようで

俺は小さい沢の岸辺の石の上でしばらくの間

大自然に抱かれながらヒイヒイとへたり込んでいた









...









もういいかげん生きたから

このまま好きだったこの沢で逝っちまっても

仕方ないと思おうと思えば思えるが

後に残された者達はどうだろう

特に一番下の高校生になるせがれは

誰に似たのか天晴れなくらいのバカたれで

やつが一人で生きていけるようになるには

まだしばらくの年月が必要だろう

俺を虐げてきた嫁だってそうだ

俺を搾取する以外にできることはロクに無いから

一人で食べていくのはかなり難儀だろう

ふつつかな嫁だったと反省するだろうか

亡くして初めて俺の愛に気づき涙を流すだろうか


...


いやそれはナイな

あいつはそんなタマじゃない



全米が泣いても嫁は泣かない


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くやしいのう








...









生命保険金を嫁にやるのはいかにも惜しいと

フツ―のことを考えられるようになったのだから

ココロも落ち着いてきたのだろう

打ちつけた左足の腿はひどく痛むが他に怪我はない

恐る恐る取り出した胸ポケットのケータイは

濡れてはいたが防水でもないのに生きていて

健気にアンテナ二本を立てている

消防に救助を頼もうか迷ったがやめた



やっぱりハズカシイ


キープしていたイワナを逃がして友バッグを空にする

絞ったタオルでケータイを拭いて仕舞い

俺はザックを背中に背負い直した

逝けるとこまで自力で逝こう









...









岩だらけの沢を下るのは意外に順調だった

移動するのに両腕を参加させられたからだ

だが沢筋を離れ杉山に入り込んだ俺の前には

無数の間伐材が転がっていた

俺は頃合いの棒きれを杖にして歩いていたが

来る時はひと跨ぎした丸太が越えられない

つま先がコツンと当たるだけで腿に激痛が走る

アアーッ

イテーッ


悲鳴をあげながらヨロヨロと進む

普段30分の行程を2時間くらいかけて移動する

俺のシャツを濡らし染み込んでいた冷たい沢水は

車に着く頃には熱い汗に替わっていた









...









荷台の隅から着替えを引っぱり出す

何年ものあいだ積みっぱなしにしてたせいか

ちょっとホコリ臭かったがそれでも有り難い

そしておもむろに濡れた札を乾かした


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船長と呼んでくれw

俺の車はもちろんオートマ車だから

左足が利かなくても運転は出来る

足の痛みと興奮で道中眠くなることもなく

俺は休憩なしで車を家へと走らせたのだ









...









いつになく早い時間にインターチェンジを降りると

俺はスーパーの駐車場に車を滑り込ませた

買い物のオバちゃん達に奇異の目で見られながら

左足を引きずり鮮魚売り場へ向かう


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限界なのは俺の足だろう








...









家へ帰り着くと嫁とせがれがいた

何だかちょっといつもより愛おしく思えるのは

今日の経験で俺もひと皮ムケたのかもしれない

嫁は笑いもせずに魚はと訊く

俺がナイよと答えると

ならばオカズがないからその刺身をよこせというのだ


...


ザックの中に摘んだシドケが入っているが

疲労困憊で茹でる気にもならない

そんな俺を優しく迎えてくれるのは

やっぱりこいつらだけだろう


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だからラッキョウをお漬けなさい




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最後まで読んでくれてありがとう
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by US100243 | 2014-06-11 14:04 | 里の味 | Comments(22)
  

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