<   2013年 01月 ( 3 )   > この月の画像一覧
 M ~ 禁断のボーイズラブ
>>続き

呼び鈴が鳴っていた

いつの間にか眠っていたらしい

ベッドの中でボンヤリしたまま放っていたが

しばらくしてからまた鳴る

宅配便なら気の毒だと俺は渋々ベッドを出た

ふらつく足取りで玄関へ行きドアの覗き穴をのぞくと

魚眼レンズいっぱいにの暑苦しい顔が広がっていた

ういヤツ、見舞いに来てくれたのかとドアを開ける

咲いたマンさん、釣り逝きましょ、ナナツガマ、ナナツガマ

嬉しそうにが言った








...







の言うナナツガマとは佐賀県の景勝地七ツ釜のことで

福岡から1時間半ほど海岸沿いに走る

急深な磯場ででかいチヌやメバルが釣れる

その頃七ツ釜で俺たちはよく夜釣りをした

a0279321_1516385.jpg

断崖絶壁ですよ


時計を見ると午後の4時だ

仕事はどうしたと訊くと

夕マヅメに間に合わせたくて早めに切り上げてきたという

男女群島からホウホウノテイで逃げ帰り会社を休んだ俺に

は夜釣りに逝こうと誘っているのだ


こいつのアタマの中はどうなってるんだ

脳のかなりの部分がバブルの毒に侵されていたのだろうと思うが

結局俺はと一緒に七ツ釜へ釣りに出かけたのだ








...








疲れていたが運転は俺がした

体力の限界と思っていたがゲンキンなもので

釣りへ逝くとなると何とかモッテしまう

観光地である七ツ釜の広い駐車場に車を駐めると

広い草原を抜け俺たちは断崖の縁に立つ

そこから竿と餌箱を片手に持ち小物は皆ポケットに突っ込み

ひょいひょいと崖を下って逝った

足元はスニーカーでライフジャケットも着けていない

今のモラルやマナーで叱られると困ってしまうが

当時はそれが普通だった

今より命も軽かったのか

毎月のように九州のどこかで海難事故があったと思う







...







少し波があったので海面から3mほどの岩棚から糸を垂れた

コマセも打たずにオキアミで釣る

1号竿にケミホタルを着けた棒ウキでハリスは1.5号

ほぼ垂直の崖なので根にまかれることもなく

よほどの大物でなければそのハリスで足りた

九州の日は遅く日没は関東より1時間くらい遅い感じだ

やっとあたりが真っ暗になった頃俺は大物を掛けた

泳ぎにシャープさがなかったから多分大チヌだったろうが

経験したことの無い重さだった

1号のチヌ竿は満月を描き

竿2本の深さから10分以上かけて俺はその大物を浮かせた

だがタモは無い

一度水面に出た魚はまたグイグイと泳ぎだす

まだ若くサイズや数を釣ることにこだわっていた俺は

その大物を何とかして獲りたかった

時間をかけて再び魚を浮かせた俺はに頼んだ

よ、下に降りてハンドランディングしてこい

今より命が軽かったのだ

えー、波荒いじゃないですかー

は嫌がった

じゃあ何が釣れたかカオだけでも見てきてくれ

危ないから嫌ですよ~

押し問答をしてるうちぷっつりとハリスが切れた

さすがに1.5号の限界を超えたのだろう

同時に俺の中でも何かが切れてしまったようだった






...






帰りの運転も俺がした

猛烈な疲労感と眠気を紛らわそうと俺はに話しかけた

60センチ以上あったよな

助手席で居眠りしかけていたがかすれた声で答える

ボラだったんじゃないですか~

俺はその晩から高熱を出し

忙しい時期だったが会社を一週間休んだのだ







...







しばらくして俺は会社を辞めた

関東に戻った俺は渓流釣りにのめり込んだ

利根川本流で戻りヤマメを狙ったり


a0279321_1145424.jpg

これが旨いのよ

那珂川北部漁協の組合員になり

数多い支流で天然ヤマメやイワナと戯れたのだ


a0279321_12305663.jpg

生産力の高い良い川だ


数年しては東日本に転勤になった

俺とはまた一緒に釣りに逝くようになった

年に一度は釣り合宿をした

板室のムードのある隠れ宿でお泊り釣行するのだが

俺とは一線を越えることはなかった

ココロは受け入れても身体が拒んでしまう

は暑苦しいカオをしてるしウスラでかい

それに男だし

ならばが紅顔の美青年だったら関係を持ったのか

そう訊かれればそれは分からない

だが現実のは武道系の体育会で主将だったむさ苦しい男で



絶対無理!


そんなワケで俺はアッチの世界を知ることもなく

平凡なノンケの男として生涯を終えるのだろうと思う







...







ある年は変なものを持ってきた

それまでも登攀力もないくせに、GPSで自分の位置を示す液晶モニターを持ってきたり

自身が熊のような風体のくせに、リュックにからからと耳障りな音を立てるクマよけの鈴をぶら下げてきたり

変なことをやらかしてはいたが

その時は短い竿にタイコリールを着けて現れたのだ


a0279321_144463.jpg

紳士のスポーツフィッシングらしい

訊けばフライフィッシングを始めたという

そしてメイフライだのティペットだのナントカキャストだの

は得意げにノーガキを垂れた



逃げたな


釣れない現実から目をそむけるためにフライを始めたのだろう

だが俺はそれを否定しない

川虫を採ることだって湧水を飲むことだってノイチゴを摘むことだって

みんなひっくるめて釣りの楽しみだ

ノーガキフィッシングでが楽しめれば、そしてココロの安寧を得られるのならそれでいいと思い

俺はからからとクマよけの鈴を鳴らしながらフライロッドを振り回すの後ろ姿を眺めていた






...






フライをやってもがあまり釣れないことに変化はない

だがフライだと釣れなくても何だか偉そうに見えるのは不思議だ

に先に釣らせ、俺はその日もたくさんのヤマメを釣った

俺は釣ったヤマメを鮎釣りの友バッグに活かしておく

喰って旨そうな個体を選抜していくのだ
a0279321_11115516.jpg

ダイワ何かくれ

大きすぎるヤマメを川に戻し、ひらりひらりと泳いでいくのを見送りながら

俺はの後ろ姿に声をかけた

ヤマメ持って帰るか

それを待っていたかのように振り向いたが答える

ふ~ん咲いたマンさんキープするんですか~

ボクは基本キャッチアンドリリースだなぁ~



釣ってから言え!


そしてワタが抜いてあれば持って帰ってもいいと言う

俺は友バッグから旨そうなヤマメを選りすぐり

と妻子の分を下ごしらえして帰りに持たせてやるのだ






...






気分転換にルアーを投げたりもするが

俺はほとんどヤマメをエサで釣っていた

エサはたいてい川虫を使う

根がケチンボでエサ代が惜しいせいもあるが

売っているイクラやらブドウ虫より圧倒的に釣れるのだ
a0279321_14424130.jpg

いろいろな川虫がいる

キンパクやらヒラタやらクロカワムシやら

ピンチョロやら鬼チョロやらスナムシやら

川により季節により水況により時間帯により

当たりエサは間違いなくあり、それは変わる

それを見極めるとともに、その川虫が何時どこで採れるのかを知っていなくてはならない

そんな川虫に関する引き出しの多寡が

ヤマメ釣りの釣果に大きく影響する

俺はヤマメ釣りの技量の半分はそこにあると思っている






...






そんなヤマメのエサにこだわりを持つ俺だが

この数年は毛鉤釣り一辺倒だ

毛鉤釣りと言ってものようにフライではなく

一般的なテンカラでもない

詳しくはシーズンになったら記事にしたいと思うが

長いハエ竿にレベルライン、ドライフライで水面を釣る


a0279321_1533725.jpg

“鹿毛トビゲラ”は一番できる子

渇水時の夕マヅメなら最強のメソッドじゃないか

日没前後のホンのひとときで

たいてい喰うに十二分なだけ天然ヤマメが釣れるのだ

a0279321_13221141.jpg






...







何をやってもアバウトだったりピントを外してしまうだが

毛鉤を自作するようになってその隠れた才能を開花させた

毛鉤を巻くのが異常に上手いのだ

プロはだしと言ってもいい


a0279321_1554764.jpg

幾多の伝説を生んだ“ミカンうずら”

は精巧かつ堅牢に毛鉤を巻きあげる

a0279321_16112535.jpg

仕事は雑なのに

の毛鉤で俺はヤマメを釣る

今の俺のヤマメ釣りはの毛鉤がなくては成り立たないのだ







...








は今地方都市に単身赴任している

任されちゃいましたよ、えへへと本人は言っているが

仕事が雑だから飛ばされ20年前に会社を辞めた俺には本当のところはわからない

シーズンオフの寒い冬の夜

は独り寂しく毛鉤を巻いている


の中に巣くった妄想がカイコのように糸を吐き

はそれをカタチにし続けているのだ


a0279321_16522486.jpg

凝った毛鉤はたいてい釣れない



よ、早く戻ってこい

俺たちのホームの北関東の渓々はかなりキツめにベクレっちまったが

おたがい年をとり子も成した

ただちに健康被害がなければいいじゃないか

そしてたまには海へ逝こう

九州の頃のように海の魚を釣って喰おう

君の好きなフライフィッシングもいいぞ

フリーバードさんのように海フライの達人もいる

房総のココロ優しい魚たちはきっと

君のちょっとハズシた仕掛けにも喰いついてくれると思うぞ



にほんブログ村 釣りブログ 関東釣行記へ
にほんブログ村
にほんブログ村 釣りブログ 渓流釣りへ
にほんブログ村
にほんブログ村 釣りブログ 陸っぱりへ
にほんブログ村

海釣り ブログランキングへ

渓流釣り ブログランキングへ

読んでくれてありがとう


[PR]
by US100243 | 2013-01-25 17:18 | 四方山話 | Comments(16)
 M ~ いつも一緒にいたかった

あのころは時代が良かったのだろう


どちらかと言えばダメ人間の俺だが

若い頃に10年ほどサラリーマンをしていた

春秋に富む20代を赴任地の九州で過ごし

今振り返れば俺はシアワセだったと思う

接待に麻雀にゴルフに魚釣りに俺は淫した

家に帰るのはベッドにもぐりこむ時くらいだった

仕事はイマイチでも許された

浮かれていたのは俺だけじゃない



時代はバブルへと突入しつつあったのだ

a0279321_1845442.jpg

イケイケですよ






...







ある夏は新入社員として配属されてきた

暑苦しい顔に分厚いレンズの黒縁メガネをかけていた

英語で有名な大学出なのだが英語ができなかった

物理学を専攻したのに勃起と膨張の区別がつかなかった

いわば天然なのだが、そんなを俺は可愛いと思った


ひょっとすると俺よりダメ人間なんじゃないかな

会社という狭い競争社会の中でココロ許せる相手と思ったのかもしれない


地方出身のは魚釣りも好きで、俺たちはよく釣りに逝った

釣りが好きなのに、なぜかにはあまり魚が釣れなかった

カンが悪いのか、ちょっとピントのはずれた釣りをしてしまう

だが俺たちは漁師じゃない、楽しめればそれでいいのだ

関東と比べるとかなり恵まれた環境の中で

俺たちは大いに魚釣りを楽しんだのだ






...






春まだ浅い3月だったと思う

俺は男女群島に遠征釣行した

海無県に生まれ育った俺の磯釣りは初心者レベルだったが

取引先のコネで遠征ツアーに混ぜてもらったのだ

どんくさいは足手まといになるので連れて行かなかった


a0279321_18442133.gif

釣り人憧れの島々


長崎の漁港から出港したチャーター渡船は

いくつかのグループからなる30人ほどの釣り人が乗り合っていた

比較的穏やかな海を半日かけて男女群島に到達すると

グループごとに各ポイントに降りていく

俺は取引先の営業部長をリーダーとした

4人の超ベテラン達のお尻にくっついて磯に上がった

a0279321_12291549.jpg

うおぉぉぉー、さあやるぞー






...







まずは夕マヅメから夜にかけて尾長メジナを狙う

昼の釣りと違って穏やかなワンドの根際を攻める

期待に反してアタリは遠かった

夜半にケミホタルの黄緑色の光がゆっくりと沈んだ

2mも沈んだかに見えた頃俺は大きく竿をあおった

4号竿が手元から曲がるような強烈な引き

耐える間もなく8号ハリスが結び目から切れた

チモトこそケプラーで補強していたが

俺はチチワでハリスを繋いでいたのだ

時を遡ってやり直したいことばかりの俺の人生だが

この時の釣行もそんな数多い場面のひとつである







...







朝マヅメまで釣り通し

俺は巨大なタカノハダイを一匹釣った

そんなデカイの見たことないというベテラン達の声に気を良くして

俺はそのタカノハダイをドンゴロスにキープした

a0279321_1255815.jpg

巻いて逝こう~

朝飯でも喰って後半の釣りに備えようと

小高い岩場に5人が集まり荷物を広げていると

沖から猛スピードで渡船が近づいてくる

荒れるからすぐに撤収だ

危険度の高いポイントから船に上げる

荷物をまとめて待っていろ


そう伝えると渡船はやはり猛スピードで去って行った

目の前に見えるのは程よい波っ気の磯

半信半疑だが船長の判断は絶対だろう

俺たちは大急ぎで荷物をまとめると

岩場に肩を並べ渡船が戻ってくるのを待ったのだ





...






人数が多いせいか渡船はなかなか戻ってこなかった

2時間くらい待っただろうか

再び渡船が姿を現した頃には

海はその表情を一変させていた

大きく揺れる船に、先行してベテラン二人が乗る

そしてリレーで荷物を上げていく

釣り道具から食糧、テントまであるからかなりの大荷物だ

荷物を上げ終え、さて俺が乗り込もうとすると

渡船が全速後退で岩場から離れていく

船長の叫びを船上の釣り人達が叫び伝える



波が来るぞ!早く上へあがれ


もたつく俺と立ち位置を入れ替えベテランが俺を押す

のんびりした口調で俺を急かした

咲いたマン君先に上がりな

俺は大急ぎで岩場を上へと登り、それにベテランが続いた


いきなり海が膨らんだ


俺のブーツは濡れもしなかったが

後ろを振り向くとそこにベテランの姿はなかった







...







岩場でヘタリこむ俺の目の前に

磯際から50mくらい先まで大サラシが広がっていた

俺はサラシの中ではライフジャケットを着けていても

浮いてこられないことを知った

恐ろしく長い時間が過ぎたように感じたが

実際は3~4分だったのかもしれない

波の向きや潮の流れを読んで待機してたのか

サラシの切れ目あたりまで退避していた渡船のそばに

ポッカリとベテランの身体が浮かび上がった

声は聞こえないが船上の釣り人達が指を差し

渡船はゆっくりとベテランの身体に近づいていく

船の影になってどうやったのかは見えなかったが

ずいぶんと時間をかけてベテランは船に引き揚げられた


そして渡船はそのまま波裏になる島影へと消えていったのだ

a0279321_1435735.jpg

捨てられないライジャケ






...







雨が降っていた

南方の島とはいえ3月の雨は冷たい

岩場に取り残された俺と取引先の営業部長は

たまたま残されていたブルーシートをかぶり

濡れた岩の上で身体を寄せ合いうずくまっていた

腹も減っていたが、何より俺を先に上がらせたベテランが波に呑まれたという事実が、酷く俺を打ちのめした

そして俺が流されなくてよかったと安堵してしまう情けない自分自身に

俺は一層ミジメな気分にさせられた


OOさん(ベテランのこと)は大丈夫だ

ワシ引き上げられてから動くのを見たっちゃ


意気消沈する俺を元気づけようと営業部長が言う

そしてアッと何かに気づいたようにベストのポケットに手を入れた

ポケットから取り出した小瓶を彼と俺の間にかざす

茶色いドリンク剤の小瓶だった

ブルーシートを通す光で

茶色い小瓶も営業部長の顔も何だか青く見えた

半分こして飲もうと営業部長は言い

俺にその小瓶を持たせた

咲いたマン君先に飲みな

“咲いたマン君先に上がりな”

営業部長の声とベテランの声が俺の中で重なった







...







ドリンク剤を半分飲み、俺はその小瓶を営業部長に渡した

彼はその小瓶を青い光にかざし見て

まだ半分飲んでないっちゃと押し戻す

俺は少しだけ舐めるように飲み、また渡す

彼はまた光にかざし見て半分になっているのを確認すると

一気にドリンク剤を飲み干しニッコリと笑った

小柄だが川筋気質が服を着て歩いてるような

タフで剛毅な人物だった

子供の頃度胸試しに関門海峡を泳ぎ渡ったというから

鍛え方が違うのだ

わずかな量のカロリーとカフェインのおかげで

俺の身体は少し暖まったように感じた







...







雨はブルーシートを打ち続け

外を見れば大波は十数mもかけ上がり

俺たちの居場所まで脅かそうとしている

俺と営業部長は濡れた岩の上に並んで横たわり

ぽつりぽつりと話をした

いろいろな話をしたと思うが

不思議にどんなことをしゃべったのかまるで記憶にない

ロクに泳げなかった俺にとって

荒れた海の岩礁に取り残されたという事態は

精神の平衡を失わせるに充分だったのだ






...






ずいぶんと長い時間が過ぎたようだ

ブルーシートを通す光が薄暗くなってきた頃

営業部長がハッキリした声で言った

船が来たっちゃ

シートをはね除け眼下の磯を見ると

かなり収まってきた波に揺られて

渡船が接岸しようとしている

俺たちは大急ぎで、しかし波に用心しながら岩場を下った

俺、営業部長の順に船に乗り込む

揺れる船の上で俺の身体は仲間達にしっかりと確保された

最後まで取り残されていた俺たちを回収すると

渡船は舵を切り長崎に向けてエンジン音を響かせたのだ







...







船に乗りすぐにベテランの様子を訊くと

海水を吐いて高熱を出しているが意識はあるとのこと

とりあえずひと安心だがそれからが地獄だった

俺は揺れに弱い体質で、ブランコにも酔ってしまうくらいだ

だから船釣りはほとんどしない

そんな俺が大時化の東シナ海の船上にいるのだ

船に乗ってカッコんだオナガの漬け丼はすぐに吐ききった

吐くものがないから水を飲んで吐き続けた

できるなら全ての内臓を吐いてしまいと思った

波間から波頭まで10mくらいあったんじゃないか

波頭でガラガラと空中で空回りするスクリュー音を聴き

数秒後には床に叩きつけられ続けた

一晩中シェイクされ続けた俺は翌朝長崎に着く頃

床の上で半死半生になっていた

ボンヤリとした意識の中で

ワタを吐くナマコの気持ちが分かった気がした






...





同じ九州と言っても長崎と福岡は結構遠い

それでも昼前には福岡にあった会社に出社すると

俺は上司に遅刻を詫び、体力回復のため今日は休ませてほしいと頼んだ

俺の上司はファンキーな男で、このちょっとした事件を面白がり

忙しい時期だったが2日休んでいいぞと言ってくれた

取引先からも連絡が入り、既に笑い話になりつつあるようで

咲いたマン生還おめでと―などとはやす声を聴きながら

俺は会社の出口に向かった

一番隅の机にがちょこんと座っているのが見えた

黒縁メガネの分厚いレンズの奥で

その瞳がキラリと光ったような気がした





...






家に帰り俺は熱いシャワーを浴びた

温めた牛乳を両手で包むようにして少しづつ飲む

二晩寝てないのに眠くならない

身体は暖まったはずなのに震えが止まらない

ベッドの中で、俺のココロは祈るように岩の上に跪き

ベテランの浮いてこない大サラシを見つめ続けていた



>>続く

にほんブログ村 釣りブログ 関東釣行記へ
にほんブログ村
にほんブログ村 釣りブログ 渓流釣りへ
にほんブログ村
にほんブログ村 釣りブログ 陸っぱりへ
にほんブログ村

海釣り ブログランキングへ

渓流釣り ブログランキングへ

迷わず押せよ押せばわかるさ


[PR]
by US100243 | 2013-01-18 17:00 | 四方山話 | Comments(10)
種をまく人
俺は首都圏近郊に生まれ育ったが

ガキの頃から野山をうろつく癖があった

湿地で捕まえたカエルをたき火であぶって喰ったり

消えゆく雑木林にもぐりこんではガマズミの実を摘んだりした


a0279321_14565531.jpg

俺の子供の頃の暮し

山芋を掘ったりカキを盗んだり

大地からの恵みを採って喰うことに

なにやら原初的なヨロコビを感じる性癖があるのだろう

採集するだけでは飽き足らず

俺は育った家の庭に作物を栽培した

ミカンやイチジクを植えたり落花生を作ったり

フナやドジョウやウサギなどの小動物も飼った

そして慈しみ育てたそれらの動植物を

最終的にはたいてい喰ってしまったのだ





...





長じて自分の家を持った俺は

狭い庭を菜園にしている

百姓は百の仕事をするから百姓だ

趣味とはいえそれがお前に出来るのかとお訊きになるか

ダイジョウブ、なぜなら俺は



自然農法を実践している


草も刈らない

薬も撒かない

肥料もやらない

メンドクサイことな~んにもしない

何の努力もしないで良好な結果が得られるという

米倉涼子もマッサオかなりインチキくさい

スピードOーニング的農法を実践しているのだ


a0279321_1531871.jpg

たわわに実ったミカン

a0279321_15341461.jpg

初冬の空に柿の実

a0279321_15581967.jpg

半野性化した菜っ葉やネギ






...






今回はそんな俺の家庭菜園ライフをご紹介してみたい

a0279321_1854132.jpg


さて、いくら自然農法だと言っても種は蒔かなくてはならない

でなけりゃタダの原っぱだ

春になって採れたてのサヤエンドウを喰いたいと思い

こんなヤツを蒔いてみた

a0279321_15475144.jpg

正式にはスナップエンドウ

そこら辺をテキト―にほじって蒔いた

a0279321_15541741.jpg

ミカンの木の横


作業は6分で完了した

...


前置きが長いワリにあっというまに話は終わっちまったな

これも自然農法だから仕方ないのだ

草をむしったり添え木を立てたり肥料をやったり

勤勉に働きたい気持ちをココロの奥に封印し

俺は俺の自然農園から撤収した






...






種を蒔いたらタネを補充しなくてはならない

俺はスーパーに物色に出かけた

ややっいいものを発見したぞ
a0279321_16164222.jpg

お約束の半額セール

スケソウダラの白子だ

マダラより格下だがなにスケソウだって充分旨い

幸運なことに嫁は出かけている

よもやタネを補充したんだからあんたのタネをよこしなさい

などと無理難題を吹っかけてくることもなかろうが

半分やるのはいかにも惜しい

早く帰って一人で全部喰おう





...





ちょっと古いようだが大丈夫かな

白子は高蛋白食品、アタルと怖い

ラップを取って匂いを嗅いでみる


a0279321_16384270.jpg

くんくん



おお青春の香りw



人類とスケソウダラはずいぶん違う気がするが

どうして同じ匂いがするんだろう

いやいや初夏に咲く栗の花の匂いもそれ系だ




生き物バンザイ!



そんな感動を共有し妙齢のご婦人と

この匂いどうよ、好きだろ

いや~ン、咲いたマンたらえっち~053.gif


そんな会話を弾ませながら喰いたいところだが

なに嫁が留守なだけでもかなり幸福だ

帰ってくる前にチャチャッと喰うぞ






...






鍋に水を張り昆布を入れる

a0279321_16564862.jpg


豆腐も入れて火にかける
a0279321_16575836.jpg


温まってきたら白子も入れて喰うが

ちょっと庭に出て薬味を探してこよう

採り残したスダチが色づいている


a0279321_1735391.jpg

まだ使えるな

スダチの木の下にはワケギが芽吹いているぞ

a0279321_1771882.jpg

少しだけ作っても重宝するよ

こりゃいい晩酌になりそうだ





...






ワケギは洗って小口に切る

a0279321_17114197.jpg

惜しみなく使えるのが嬉しい

ワケギをたっぷり入れたポン酢に、さらにスダチを絞り入れる

a0279321_17211761.jpg


アツアツの白子を一瞬それに浸して喰う


a0279321_17215935.jpg

庶民のゼイタク


旨い...


酒が進んでしょうがない
a0279321_17262580.jpg

空けちまった


シアワセな独り酒にずいぶんと酔っ払った俺は

釣りをした時のように宴の痕跡を念入りに消すと

早めにフトンへともぐり込んだのだ





...






階下で嫁の怒りのオタケビが聞こえる

痕跡は消したはずなのに

捨てたラップを開いて喰った物を確認したのかもしれない

俺は暖まりかけたフトンの中で首をすくめ

再び静かにまぶたとココロを閉じる

膝を抱えて丸くなり

小動物のように浅い眠りへと落ちていくのだ


にほんブログ村 釣りブログ 関東釣行記へ
にほんブログ村
にほんブログ村 釣りブログ 渓流釣りへ
にほんブログ村
にほんブログ村 釣りブログ 陸っぱりへ
にほんブログ村

海釣り ブログランキングへ

渓流釣り ブログランキングへ

明けましておめでとうございます
[PR]
by US100243 | 2013-01-02 17:52 | 庭の収穫物 | Comments(12)
  

釣って食べたり採って食べたり
by 咲いたマン
プロフィールを見る
画像一覧
最新のコメント
カツさん、おはようご..
by 咲いたマン at 07:06
今晩は。 9月は色々と..
by カツ at 18:58
もも兄ぃ さん、おは..
by 咲いたマン at 07:27
海おとこさん、おはよ..
by 咲いたマン at 07:18
 咲いたマンさん、こんに..
by もも兄ぃ at 09:43
あの難しいハコフグを釣り..
by 海おとこ at 08:21
磯トンボさん、おはよ..
by 咲いたマン at 09:28
今回は危険な香りのするb..
by 磯トンボ at 09:17
磯トンボさん、おはよ..
by 咲いたマン at 08:26
海おとこさん、おはよ..
by 咲いたマン at 08:17
しげさん、おはようご..
by 咲いたマン at 08:11
スマホォ デビューおめで..
by 磯トンボ at 07:11
おお、とうとうスマホにな..
by 海おとこ at 22:06
こんばんわ。 新しい家..
by しげ at 21:46
海おとこさん、おはよ..
by 咲いたマン at 09:13
ご無沙汰しておりやす。 ..
by 海おとこ at 08:26
アトランティックな夜..
by 咲いたマン at 08:12
夏の夜の磯は北国でも虫で..
by atlanticnighttales at 01:17
しげさん、おはようご..
by 咲いたマン at 06:49
良いなぁ~ うちに来る..
by しげ at 20:56
ブログジャンル
家庭菜園
釣り